2013.11.29
UI変更が不評な時に役立つ原因の切り分け方
UI変更をした時のことについていろいろと記事を見かけたので書いてみました。ユーザー側と制作側、それぞれの原因の切り分け方や分析、その対応に役立つと思います。
UI設計の際考慮する4つの要因
例えば、UI変更により欲しい情報が見つけにくくなった、ということが起こったとします。
この場合、ユーザーはその原因をUIやデザインに求めがちですし、制作者はその原因をユーザーに求めがちです。アプリのレビュー欄が荒れたり、ブログなどで制作側の主張があったり、というのも最近よく見かけます。
このような課題達成の成功や失敗(この場合はユーザーが欲しい情報を見つけられるかどうか)に関して、ワイナー(Weiner, 1974)は、4つの原因があるとしました。
「能力」「努力」「課題の難易度」「運」です。
「能力」と「努力」はユーザー側の要因、「課題の難易度」は制作側の要因、「運」はそれ以外の要因です。
上記の場合に当てはめて、具体的な例を挙げると…
■能力
- Webサイト操作の熟達度
- Webにおけるデファクト・スタンダードの理解(「下線付き文字はリンク」など)
- 学習力の高さ
■努力
- 情報を見つけようとする努力
- 検索などの機能の駆使
■課題の難易度
- ラベルや遷移のわかりやすさ、理解のしやすさ
- ルールの統一性
- 情報の見つけやすさ
■運
- リンクをクリックした先に、たまたま欲しい情報があった
- 誰かが操作を教えてくれた
などが挙げられます。
UIに原因があるか、ユーザーに原因があるかを判断する
ユーザーテストやアクセス解析が必要なのですが、判断する方法として、ケリー(Kelly, 1967)の共変動モデルが役立ちます。
これは、特異性、合意性、一貫性という3種類の情報を基準に原因を定位するという考え方です。
特異性、合意性、一貫性の確認
- 特異性:その対象への行為者の反応は、他の対象への反応と異なっているのか
- 合意性:他の人たちは、その対象に行為者と同じ反応を示すのか
- 一貫性:行為者は、その対象に別の状況でも同じ反応を繰り返すのか
引用:『認知心理学』 第16章 社会的認知 395ページ
これを今回の場合に置き換えてみると
- 特異性:ユーザーはそのサイトで情報を見つけられないが、他のWebサイト(難易度は同じ)では情報を見つけられる
- 合意性:他のユーザーも同様に、情報を見つけられない
- 一貫性:ユーザーは、別の状況(心理状態や体調の良し悪しなど)でも情報を見つけられない
となります。
これら3つの基準がすべて満たされると、その原因はUIにある可能性が高くなります。逆に、特異性と合意生が満たされず、一貫性のみが満たされる場合は、ユーザーの資質に原因がある可能性が高くなります。
ユーザーに原因がある場合の対応
UIに原因がある場合は、もちろん改善や再設計を行う必要があるのですが、ユーザーに原因がある場合はその対応や判断が難しいです。というのも、解決方法が、『ユーザーの操作レベルの底上げ』と、『UIをさらにわかりやすくする』、という2点でどちらも成果や基準がわかりづらいからです。また、当然ですがKPIやKGIとも合わせて考えなければなりません。
考えられる対応の一例としては以下が挙げられるのではないでしょうか。
- ユーザーの操作レベルを上げるようなコラム・ガイドを作る
- どのレベルのユーザーまで問題なく使えるようにするか決定し、UIを変更する
- ヘルプコンテンツの充実
- 対応しない
また、「わかりやすさ」の拡充が、それまでのユーザーにウケていた「スマートさ」を奪う場合もあります。
余談ですが、旧UIを残す、という意見があってそれはないだろーと思っていたのですが、そういえばはてブがリニューアルした時、私よく「前のUIに戻してほしい」って言ってましたね…。
なので、場合によっては旧UIを残す、というのも一つの選択肢かもしれません。もしくは変更までの猶予期間を設けるとか。
まとめ
- UI変更に影響する要因は、「能力」「努力」「課題の難易度」「運」の4つ
- 原因の切り分けとして、特異性、合意性、一貫性の確認をする
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