2012.8.22

ステレオタイプ的デザインのメリット、デメリットについて考えてみた

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ステレオタイプ的デザインのメリット、デメリットについて認知科学・社会心理の視点から考えてみました。このメリットとデメリットを理解しておくと、デザインにちょっと役立つのではと思います。

参考書籍は以下です。

ステレオタイプ的デザインとは?

そもそもステレオタイプ的デザインとは、かわいいなどのイメージを表現したいとき、個人や集団が思い浮かべることが多い要素(色、形、モチーフなど)で構成されたデザインのことです。(これは私の中の定義であって、広く世間一般で認識されていることではないのですが…)

たとえば、「フリル」や「パステルカラー」という要素は、かわいらしさや少女性を表すのではないでしょうか。
デザイナーはこのステレオタイプを利用してデザインすることも多いと思います。

ステレオタイプ的デザインのメリット

ステレオタイプ的デザインのメリットは、ターゲットユーザーの視点からみて以下3つが考えられます。

  • 1) 予想しやすい
  • 2) 受け入れやすい
  • 3) 魅力を感じやすい

それぞれについて説明をしていきます。

1) 予想しやすい

その会社やブランドがどんなイメージを目指しているのか、どんな商品を扱っているのか、どんなメッセージやポリシーを持っているのか、などの予想がしやすくなります。

ステレオタイプ的デザインは、私たちの記憶の中にあるものを多く用いたデザインです。記憶の中にあるものは、何らかのイメージと結びついていることが多いため、その要素を見るとイメージが想起されやすくなります。

私たちが対象ーウマ、ヴァイオリン、人々ーを知覚するとき、特徴はゆがめられ、忘れられ、誇張されたりするが、その集合的記憶は、印象のすべてを備えたもっとも代表的な形態の記憶である。
(「脳は絵をどのように理解するか」ロバート・L・ソルソ著 鈴木光太郎・小林哲生共訳/285頁)

私たちは過去の記憶を手がかりとして、この要素を使っているのだからこんなイメージの商品だろうな、などと予想をします。ステレオタイプ的デザインは、私たちの記憶の中にあるもので構成されているので、新たに判断をする労力が減り、予想がしやすくなります。

2) 受け入れやすい

私たちは新たな対象を知覚する際、過去の記憶をもとに判断をします。ステレオタイプ的デザインは、一度受容された要素で構成されたデザインなので、それに類同したものを受け入れやすくなります。

この要素はこんなイメージを持っているな、と知っているので、その会社や商品などを、より受け入れやすくなるのです。

3) 魅力を感じやすい

人は自分と似たものに好意を抱きやすいという性質があります。これは、類似性による好意効果と呼ばれています。

ターゲットユーザーの身辺にある要素で構成されたデザインは、ターゲットユーザーにとって自分に近いものとして感じられやすいのではないでしょうか。
たとえば、ターゲットユーザーの好む要素が、フリルやパステルカラー、花柄などであったとき、それらが用いられたデザインは好まれやすい傾向にあるのだと思います。

ただし、フリルやパステルカラー自体に魅力を感じるのではなく、それらから得られる情報(会社の理念やポリシーなど)の自分が共感できる部分が魅力につながります。

服装の類似性それ自体が魅力に影響するのではなく、服装から得られる情報(すなわち知覚者たちが共有している態度あるいは価値)の肯定的な性質が魅力に通じるのである。
(「被服と身体装飾の社会心理学<下巻>」S・B・カイザー著 被服心理学研究会訳/56頁)

以上がステレオタイプ的デザインのメリットです。ここからは、デメリットを考えていきたいと思います。

ステレオタイプ的デザインのデメリット

ステレオタイプ的デザインのデメリットは、マンネリ感だと思います。
私たちが知っているもので構成されたデザインということは、新鮮味に欠ける、どこかで見たようなデザインということです。

それが、会社やブランドの性格(伝統性を重視するような)と合っていれば問題ないのですが、新しいものを追求する企業では革新的なデザインの方が重要とされるのではないでしょうか。

たとえばApple製品のデザインは、常に新しく革新的です。それは、Appleという会社やその製品が、ステレオタイプ的なデザインよりも革新的なデザインの方が価値があるという認識をされ、またその役割を担っているからだと思います。

参考:Apple Webサイト デザインの変遷
http://www.flickr.com/photos/kernelpanic/sets/283374/

ステレオタイプ的デザインと革新性

しかし革新的なデザインというのは、必ずしも受け入れられるわけではありません。革新的なデザインに対する肯定的な感情、もしくは否定的な感情がいくつかの段階を経て、生み出されます。

参考:ロジャーズのモデル(革新の受容の諸段階)
認知 ⇒ 関心 ⇒ 評価 ⇒ 試行 ⇒ 採用

従って、革新的なデザインに、ステレオタイプ的な要素を取り入れて、引っかかりをつけるというデザインが多いと思います。革新的とステレオタイプ的という2つの性質は、会社の性格や、商品の内容、市場、ターゲットユーザーなどに影響されます。これらを考慮しながら、ステレオタイプ的デザインと革新的なデザインのバランスをうまくとっていくことが大切なのではないでしょうか。

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